好きの代わりにサヨナラを《完》
「お前に何がわかる……?」

恭平は低くつぶやいた。



「まだデビュー前の莉緒が、俺のファンからどれだけ酷いバッシングを受けたか知らないだろ」

恭平が自分の過去を語るのは初めてだ。

あたしは何も言わずに、彼の言葉に耳を傾けていた。



「ファンなんて都合のいい存在だよ。自分の思い通りにならなければ、すぐ敵に回る。お前もよくわかっただろ」

恭平は、ガタンと音を立てて立ち上がる。

少しいらついた様子で鞄に教科書をしまった。



「一人の奴に本気になるなんて馬鹿じゃね?どうせ誰も幸せになれないんだよ」
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