好きの代わりにサヨナラを《完》
音のない公園に、一歩一歩踏みしめる足音が聞こえる。

あたしは、その音が聞こえる方向に視線を向けた。



「蒼……」

懐かしい蒼の姿に、胸が締めつけられる。

あたしは一呼吸置いてから、彼のほうに体を向けた。



「こんな時間に呼び出してごめんね」

「俺は、別に大丈夫だけど……ほのかのほうが忙しいんじゃね?」

オレンジ色の明かりが、彼の足元を照らしている。

あたしは、蒼に手の中のチケットを差し出した。



「これ……蒼に渡したくて……」

蒼は片手でそれを受け取ると、「ありがとう」とつぶやいた。
< 197 / 204 >

この作品をシェア

pagetop