好きの代わりにサヨナラを《完》
「あたし、蒼にちゃんとお礼言いたかった。あたしが変わるきっかけをくれたのは蒼だから……」

蒼は、少し距離をあけて立っている。

あたしたち二人は、どちらからもその距離をつめようとはしなかった。



「あたし、自分のこと好きになりたかった。もっと自信が持てるようになりたかった」

ちゃんと蒼の目を見て話したいけど、彼の顔を見るのが辛くなってしまった。

まっすぐあたしを見る蒼の視線から逃げて、あたしは目を伏せた。



「あたし、みんなが憧れるアイドルになりたい。見てる人が、幸せになれるようなアイドルになりたい」

あたしは一度うつむいてから、また蒼に視線を向けた。



「このまま、中途半端な自分で終わりたくないの」

蒼は何も言わずにあたしの話を聞いている。

あたしが言葉につまると、夜の静けさに飲み込まれてしまいそうだった。
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