好きの代わりにサヨナラを《完》
他のメンバーから少し離れたところに優奈がポツンと一人で立っていた。



「優奈ちゃん、大丈夫?」

優奈はあたしを見てうなずいたけど、彼女の瞳は今にも泣き出しそうなほどウルウルしている。

不安なのは、あたしだけじゃない。

あたしは微かに震える彼女の小さな手をギュッと握った。



「ステージの上は、優奈一人じゃないから……みんなついてる。大丈夫だよ」

彼女を不安にさせないように、あたしは緊張を隠して微笑んだ。



それまで客席に流れていた音楽が鳴りやむ。

客電が落とされると、一瞬静かになってから大きな歓声が上がった。
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