好きの代わりにサヨナラを《完》
一ノ瀬恭平……
何考えてるの?

『あんたのこと、気に入った』

そう言ってあたしの腕をつかんだ恭平の冷たい瞳を思い出す。



あたしのこと、気に入ったってどういう意味?

怖い……
これ以上近づいたら、何されるかわからない。



事務所の先輩で大物俳優じゃなくても、人を威圧するオーラがある男。

恭平がどういうつもりであたしを恋人役に指名したのかわからない。



あたしに恥をかかせるため?
それとも、あたしを自分のものにするため?

もうあの男とは関わりたくないのに、新人のあたしに断る権利なんてなかった。
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