好きの代わりにサヨナラを《完》
「あんた、まだキスしたことないだろ」

今度は素直に答えられなかった。

顔が赤くなりそうで、あたしは無言でうつむいた。



「ファーストキスとっとけよ……好きなやつのために」

恭平がこんなこと言うなんて思ってなかった。

人の気持ちがわからないなんて言ったら失礼だけど、もっと冷たい人だと思っていた。



「その代わり、演技だけはちゃんとしろよ」

恭平はあたしに視線を向けて、優しく微笑んだ。

彼は、何が言いたかったんだろう……

まだ不思議そうな顔をしているあたしに、「じゃあな」と言って恭平は背を向けた。



「待ってください!」
< 32 / 204 >

この作品をシェア

pagetop