好きの代わりにサヨナラを《完》
立ち上がって叫んだあたしに、恭平はゆっくり振り返る。



「キスシーン、ちゃんとやります」

なんでそう決めたのか、自分でもわからない。

あたしは、まっすぐ恭平と向き合っていた。



「ちゃんとやらせてください」

アイドルだからって甘えたくない。

あたしはプロとして、きちんと仕事してみせる。



「本当にいいの?」

恭平を見上げ、あたしはうなずいた。



「後悔してもしらねぇからな」

恭平の瞳に、冷たさが戻ってくる。
少しおびえたあたしを見て、恭平は微かに笑った。
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