好きの代わりにサヨナラを《完》
『好き……大好き』

恭平と至近距離で見つめ合う。

ほんの数秒の間が、あたしにはとてつもなく長い時間に感じられた。



恭平の長い指が、あたしの頬に触れる。

少し切なさを秘めて愛しい人を見つめるような恭平の目力に、あたしは吸い込まれてしまいそうだった。



恭平の唇が、あたしに重なる。

本当は目を閉じる設定だったのに、動揺してすぐに目を閉じられなかった。

もう逃げ出したい衝動を抑えて、あたしはギュッと目を閉じる。



キスって、ただ唇が軽く触れるだけのものだと思っていた。

でも、恭平はそうじゃない。

恋人どうしが交わすような本気のキスだった。

恭平自身が慣れてるからか、役に入り込んでいるからなのかわからない。

彼の想いの強さが伝わってくるような深く優しいキスだった。
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