好きの代わりにサヨナラを《完》
芸能界に入って苦労したから?

自分の中にある微かな恋心に気づいたから?

それとも……



自分が大人びてしまった理由を考える。

映画の撮影が終わってしまえば、もう恭平と毎日顔を合わせることもない。

恭平のことを考える必要はないのに、あたしはまだあの感触が忘れられなかった。

初めてのあたしに、恭平のキスは大人過ぎた。

それが仕事だと割り切って忘れられるほど、あたしは大人になれなかった。



CDのジャケットを胸に当てて、目を閉じる。

蒼に会って、このCDを渡したい。

だけど、なんだかよくわからない罪悪感を覚えてしまう。

机の上に置きっぱなしだった携帯から、突然着信音が鳴り響く。
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