好きの代わりにサヨナラを《完》
薄暗かった会場の明かりがつき、お客さんが帰り始める。

手をつながれているのが気まずくなって、あたしは自分から口を開いた。



「蒼に渡したいものがあるの……」

そう言って手を引っこめて、鞄からCDを取り出す。

「あたしたちのセカンドシングル」

蒼はジャケットに写るあたしの表情をしばらく眺めた後、「サンキュー」と受け取った。



「この後、どうする?」

あたしたちは他のお客さんが全員いなくなってから会場を出た。

あたしは、少し距離を取って歩く蒼を見上げる。

「飯でも食う?」

時間的には、ちょうどお昼だ。

ショッピングモールの中にあるレストランでランチでもしよう。

そう蒼に答えようとした時、映画のグッズ売り場にいた女子高生と目が合った。
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