好きの代わりにサヨナラを《完》
「ありがとう」

よく見たらぬいぐるみじゃなくて、キーホルダーみたい。

小さなウサギの頭には銀色のチェーンがついていた。

大きな蒼の手にぶら下がっているキーホルダーを、あたしは両手で包むように受け取った。



まもなくドアが閉まりますとホームにアナウンスが流れる。

あたしは乗客の最後に車両に乗り込んだ。

デッキに入るとすぐ蒼のほうに振り返る。

蒼はまだ開いたままのドアの前に立っていた。



「蒼……」

蒼に伝えたいことはたくさんある。

だけど、何から話せばいいのかわからなかった。

「ほのか、東京で頑張れよ」

蒼の言葉は力強い。

あたしは小さくうなずいた。
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