好きの代わりにサヨナラを《完》
ホームに発車ベルが鳴り響く。

あたしは少しでも蒼の姿を目に焼きつけたくて、まっすぐ彼だけを見ていた。



何も言わずに見つめ合うあたしたちの間で、新幹線のドアが閉まる。

あたしは、彼とあたしをさえぎる透明なドアのガラスに手をかけた。

もう少しだけ、蒼と一緒にいたい。

東京に戻らなきゃいけないのに、蒼の顔を見ていたらそう思ってしまった。



新幹線が動き出す。

ホームに立つ蒼の姿が、だんだん小さくなっていく。

あたしは彼が見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。



故郷が離れていくのが、あたしは少し寂しかった。

デッキの壁にもたれかかって、懐かしい景色が流れていくのを車窓から眺めていた。



新幹線を使えば数時間で行ける距離だけど、あたしには東京がすごく遠い場所に感じられる。

もう二度と会えなくなるわけじゃない。

いつかまたきっと会えるから……

幼なじみとの距離を埋めるように、あたしは小さなウサギをそっと胸に抱きしめた。
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