好きの代わりにサヨナラを《完》
第二章
あたしたちのグループsnow mistは、音楽フェスに出演することが決まった。

まだ単独ライブを行なったことがないあたしたちは、こんなに大きな会場で歌うのは初めてだ。



今日はゲネプロと言って、実際の会場で本番で使う衣装を来て最初から最後まで通しでやる日。

会場には、出演する有名アーティストがたくさん集まっている。

出演アーティストの欄には、一ノ瀬恭平と女性アーティストの中では一番売れている莉緒(リオ)の名前もあった。



会場の雰囲気が知りたくて、あたしは美憂と一緒に高校の制服風のブレザーの衣装を着て客席を歩いていた。

アリーナにはお客さんが座る予定のパイプ椅子がたくさん置いてある。

本番と全く同じように照明が操作されているため、客席はかなり暗かった。

まだお客さんは一人も入っていないのに、自分が緊張しているせいか会場の空気がピンと張りつめている感じがした。



ステージに、一ノ瀬恭平と莉緒が登場した。

あたしと美憂は、自分の前のパイプ椅子に手をかけて通路の端に立ち止まった。
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