好きの代わりにサヨナラを《完》
曲が始まると、ステージでポーズを決めている二人の姿が明るく照らしだされる。

一ノ瀬恭平はグループが解散して以来ほとんど音楽活動はしていなかったけど、久しぶりに莉緒とコラボ曲を出していた。



莉緒はあたしと同じ15歳だけど、歌って踊れる本格派アーティスト。

去年デビューしたばかりなのに、今では女性アーティストで売上ナンバーワンだ。

大人っぽい衣装を着こなして、長い髪が風を切るようにクールに踊る彼女はとても同じ年齢には見えなかった。

背が高い恭平と、顔が小さくてスタイルがいい莉緒が並ぶと本物のカップルみたい。

かなり難易度の高い振り付けだけど、二人とも余裕でこなしている。

アイドルとアーティストの違いを思い知らされた感じがした。



「すごいね」

自分たちも同じステージに立つことを忘れてすっかり普通のお客さんになっていたあたしの隣で、美憂が小さくつぶやく。

あたしはステージにみいったままうなずいた。



「いつか、あたしたちだけでライブやりたいね」

美憂はふわふわした可愛らしい外見とは違って、芯のしっかりした子だった。

美憂はステージをまっすぐ見据えていた。

「絶対やろうね」

今はまだ全然有名じゃないけど、いつか自分たちだけでこんなに大きな会場をお客さんで一杯にできるようになりたい。

そう言ったあたしに、美憂は力強くうなずいた。
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