好きの代わりにサヨナラを《完》
莉緒の胸元には、制服のシャツに隠すようにつけられたシルバーのネックレスが輝いている。

シルバーのチェーンに指輪のようにも見えるリングが通されているだけのシンプルなデザイン。

そのリングに英語の文字が刻まれてる気がしたけど、ここからはなんて書いてあるのか読めなかった。



「今日はありがとう。莉緒が誘ってくれなかったら、あたしすごいヘコんでた」

「全然気にすることないよ。あいつら、あたしの悪口もめっちゃ言ってるし。売れないやつのひがみだから」

莉緒は強い。

周囲の視線もささやき声も気にせず、幸せそうにアイスを食べている。

「ほのかは目立つからしょうがないよ」

あたしはやっとアイスの一口目をスプーンですくって口に入れたところだった。

スプーンを口に入れたまま、莉緒に視線を向ける。



「ステージで初めてほのか見た時、ほのかだけ輝いてるっていうか、ほのかにしか目がいかなかった。

他の子もすごい可愛いいんだけどさ、なんかただのお人形さんみたいっていうか印象に残らないんだよね。
あたし、ほのか以外の子の顔全然覚えられないし」

莉緒がそんなこと言うなんて思ってなかった。

なんでもストレートに話す莉緒だから、きっと本当にそう思ってくれているんだろう。

今までちゃんと人にほめられたことがなかったから、莉緒の言葉があたしはすごく嬉しかった。
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