好きの代わりにサヨナラを《完》
「ごめんなさい……」

彼女のか細い声は、かろうじてあたしの耳に届いた。

美憂はそれ以上何も言わずに、頭を下げ続けていた。


「今度スキャンダルが出たら、うちのグループはおしまいだ。お前たちも気をつけるように」

マネージャーに連れられて、美憂だけ退室する。

事務所の人も交えて、美憂の今後について話し合いが持たれた。

握手券やグッズの売上など、グループ内の実質人気ナンバーワンは美憂だった。 

誰にでも人懐っこく、みんなから愛されるキャラの美憂はあたしたちにとってなくてはならない存在だ。

誰も彼女を辞めさせようとは思っていなかった。

彼女が復帰するために必要な条件は、今付き合っている彼と別れること。

そして、ファンの前で直接謝罪することだった。

みんな美憂は必ず戻ってくると思っていた。

ファンの前で謝罪することは受け入れたけど、彼と別れるという条件について彼女は首を縦に振らなかった。
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