好きの代わりにサヨナラを《完》
「瑠菜﹙ルナ﹚……」

あたしは立ち止まり、小さくつぶやく。

彼女はあたしに気づいてないけど、あたしと同じsnow mistのメンバー。

今では黒髪に戻してるけど、元はギャル系で素行はよくない。
それでも、アイドルの彼女がこんな場所でこんなことしてるなんて信じられなかった。



二人はまだあたしの存在に気づいていない。
完全に二人だけの世界に入っている。

妙に体をくっつけて見つめあってから、二人は人目もはばからずキスをした。



見てはいけないものを見てしまった。

今更存在に気づかれるのも気まずくて、あたしは物音一つ立てずその場に突っ立っていた。



目をそらしたくなるような濃厚なキスの後、背の高い金髪の男が顔を上げた。

無表情な冷たい瞳があたしをとらえる。

男の整いすぎた顔が、あたしはすごく怖かった。
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