好きの代わりにサヨナラを《完》
「あたしの気持ちはどうなるの?彼は大切な人なんだよ。彼と別れるなんてできない」

「わかる……美憂が辛いのはよくわかるよ。
でも、今一番大事な時なんだから……あたし、美憂に戻ってきてほしい。美憂と一緒にステージに立ちたいの」

美憂はゆっくり顔を上げ、まっすぐあたしに視線を向けた。



「ほのかは本気で人を好きになったことがないの?」

美憂の真剣な眼差しに、あたしは言葉につまってしまった。

「好きなの……彼のこと、本気で好きなの」

美憂の大きな瞳からハラハラ涙がこぼれ落ちる。

「彼とは絶対別れない」

そう言い切って、美憂はあたしに背を向けた。

美憂は、一度も振り返ることなく歩いていく。



美憂の気持ちがわからないわけじゃない。

プレゼントを選んでいた時の幸せそうな美憂と、辛そうに涙を流す美憂の顔が交互に浮かんでくる。

これ以上、彼女を困らせたくない。

あたしは美憂を追いかけることができなかった。
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