好きの代わりにサヨナラを《完》
「お誕生日おめでとう」

慌てて付け加えたあたしに、蒼は少し照れたように「ありがとう」と答えてくれた。



「鍵つけてみたんだけどさ、これちょうどいいな」

蒼が気に入ってくれている。

大好きな蒼の声だけど、あたしは会話に集中することができなかった。

あたしは誰か来ないか辺りを見回しながら、控え室から離れた場所に向かって歩いていた。



「ほのか、次はいつ帰ってくるの?」

「わかんない……」

もう前みたいに気軽に会うことはできない。

あたしはスケジュールを確認することなく、そう答えた。

「ほのかの誕生日も仕事入ってる?」

「うん」

あたしの誕生日にも、握手会が入っていた。

メンバーの誕生日には、握手会の場を借りて生誕祭が開催されることになっている。

肝心の本人が生誕祭当日に休む訳にはいかない。

蒼の真意はわからないけど、あたしは正直に答えた。
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