好きの代わりにサヨナラを《完》
「俺、まだスカイツリー行ったことなくてさ……
東京のことよくわかんねぇし、ほのか案内してくれない?」

「あたしも行ったことないから、よくわかんないよ」

向こうから歩いてくる二人の人影が見える。

マネージャーに連れ戻されたんだろうか。

険しい表情をしたマネージャーの後ろを、美憂は泣きはらした顔で歩いている。



こっちの緊迫した空気が、蒼には伝わらない。

スマホを握るあたしの前を二人が通り過ぎていく。

美憂はうつむいたままだったけど、マネージャーは一瞬鋭い視線をあたしに向けた。



「ほのか……会いたい」

蒼の低くかすれた声が、あたしの耳に響く。

あたしは、スマホをギュッと握りしめた。



二人は控え室のほうに歩いていく。

マネージャーに促されるように美憂が先に入ると、パタンとドアが閉められた。



「ごめん……会えない」

そう言って、あたしは蒼の返事を聞かずに電話を切った。
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