好きの代わりにサヨナラを《完》
一ノ瀬恭平﹙イチノセキョウヘイ﹚
彼の名を知らない人はいないだろう。

歌って踊れる男性アイドルグループのメンバーとしてデビューしたけど、グループは解散。

今はイケメン俳優として活躍している。



切れ長な瞳に薄い唇。

とても自分と同じ年齢とは思えない大人びた色気がある。

そんな彼の鋭い瞳にとらえられて、あたしは動くことができなかった。



うっとりした表情で彼に抱かれていた瑠菜が振り返る。
元々彼女はあたしのことをよく思っていない。

彼女は嫌なものを見るような目であたしをにらみつけた。



「……ご、ごめんなさい」

あたしは慌ててその場から逃げ出した。
< 9 / 204 >

この作品をシェア

pagetop