好きの代わりにサヨナラを《完》
マネージャーは振り返らずに早足で廊下を歩いていく。

彼の背中からなんとなくイラついている感じが伝わってきて、あたしは何も言わずに後ろをついていく。



デビューしたばかりの頃は、言葉づかいも丁寧であたしのことは「ほのかちゃん」と呼んでくれていた。

アイドルらしい振る舞いについてアドバイスしてくれたり、困った時にはさりげなく手を差し伸べてくれたりしていた。



美憂の一件があってから、彼はすっかり人が変わってしまった。

いつもイライラしていて、言葉も荒くなっている。



あたしたちの不祥事は、マネージャーの責任でもあるから無理もない。

あたしたちが問題を起こす度に、マネージャーは社長から呼び出しを受けていた。

今度大きな問題が起これば、彼の首も危なくなるのかもしれない。

あたしたちは運命共同体だった。



マネージャーは誰も使っていない部屋の電気をつけ、あたしに入るよう促した。
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