ソラは今日も喧嘩中
次の日、桜と咲子にそのことを話した。

咲子が作ってきたマカロンを食べながら。

作ってきた本人は食べる事はなく、桜はダイエット中だというので、私ばかりがぱくぱくと頬張っていた。

電球の視線を感じる。

いつものお調子者キャラで貰おうと思えば貰えるのに、なぜかこういう時だけ奥手なのだ。

だから、遠慮なく最後の一つを口にした。

残念そうな電球を横目に、本題について考えた。

「そっかぁ、松岡くんかぁ。最近仲良しだったもんねぇ。」

そうなのである。合宿以来、挨拶くらいはするし、何度か話したりもした。

「で、どうするの?」

そう、そうなのである。

長身のイケメンで紳士的。

運動神経と学力は知らないが、告白前にそんな事あるわけないとかき消した妄想に近い理想の相手が、その直後に告白してきたのである。

「ていうかさぁ。」

相変わらず美には余念がない桜。

姿勢はバッチリ、サラサラストレートの黒髪も、健在である。

「松岡くんの名前って何?」

「.....。」

そういえば、知らない。

私は、名前も知らないような人と付き合おうとしていたのか。

いくらタイプだと言っても、それは失礼だろう。

万が一付き合ったとしても、付き合ってから
「そういえば、下の名前なに?」

とかありえないだろ!

イケメンに告白されて舞い上がっていた。

好きなわけでもないのに。

一日待たせたことすらも申し訳なく思って、また、いつも大空が断っている理由もわかった気がした。

「断ってくる。」

そう言って、反対端のクラスまで駆けていった。
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