♡放課後みすてりあすいーつ!♡
「ほら」
美色が指さした先には、文庫本片手にベンチへ腰掛ける叶海ちゃんの姿。
視界にそれを入れた瞬間、透輝くんの目が輝き出す。
「はい!ありがとうございます!!オレ、ちゃんと言ってきます!!」
彼は叶海ちゃんの元に走り出した。
「叶海ちゃん!」
「あ、え、う……越谷、クン」
よく耳をすませて聞くと、微妙にイントネーションがおかしい。
補聴器をしてるとは言え、自分の声が聞こえてないから当然か。
ソワソワとどう会話すればいいのか迷ってる叶海ちゃんと一度しっかりと目を合わせると、透輝くんはスマホの画面を見始めた。
そして、眉間につまんだ右手の二指の指先を当てて頭を下げながら顔の前に構えた右手を少し前へ出した。
『ごめんなさい』の手話だ。
叶海ちゃんは困惑気味。
「え?」
「知らなかったとはいえ、酷いことしてごめん。最悪な皮肉だったよね」
「う、ううん!わ……たし、こそ、ゴメンね?知らなかったんだから、しょーがない、コトなのに」