貴方は過去の人
確かに好きだった人
――――狭いな、と思った。
この街にどれだけの人がいるのか、私は知らない。ただ、たくさんいるはずだし、私もその一人だということを理解している。
けれど。
まさか、と思った。
人混みの中に、見つけた。やや細身の体に、茶色に染めた髪の毛。前は黒髪であったけど、すぐにわかった。
向こうも私に気づいたらしく、「あ」という顔をした。それは何の意味があるのだろう。けれど「久しぶり」といった声が、甘い記憶を呼び起こした。