貴方は過去の人
「大学は?」
「まあまあかな。単位ぎりぎりだけど」
「ふぅん」
「梨花はどうなんだよ」
「検定この前受けたし、単位にも余裕があるから平気」
その声や、顔。話をすると付き合っていたころがよみがえるから、嫌だ。
私はもう、好きじゃない。愛してるなんか彼にはいえないし、肌を重ねることも出来ないだろう。だから、優しくあれこれ話さないでほしい。
それなりに長く一緒にいたから、情がある。全部が嫌いになったわけではないから、なおさら。
「梨花は真面目だからなぁ。その辺しっかりしてるか」
彼は私を真面目だという。けれど、私はこれが普通だと思っている。大学だってタダじゃない。お金だ。何をするにもお金がかかっている。無駄をしたくない。単位だって落としたくない。
知ったような口ぶりでいう彼に、何だか苛ついた。
私は黙った。