青い夏
『水ヨーヨー釣り』の看板を見つけ、蒼斗の袖を引き店に寄った。

小学生くらいの4人の子供たちが、水面に浮かぶ水ヨーヨーとにらめっこをしている。

麦藁帽子をかぶった店番のおじさんにお金を渡し、つり紙をひとつ貰う。

蒼斗も同様につり紙を貰った。

子供用のプールにプカプカと浮かぶ色とりどりの水ヨーヨー。

その中で私は最初にオレンジ色のものを釣り上げた。

「嬢ちゃん、うまいもんだなー」
しわがよったおじさんは感心した。

どんなもんだい! といった感じで私は微笑んだ。

「兄ちゃんはダメだなぁ」
おじさんが言った。

傍らの蒼斗に目を向けると、つり紙は既に千切れていた。

蒼斗は苦笑している。

オレンジのヨーヨーを取り外し、今度は赤いヨーヨーに狙いを定め、釣り上げた。

小学生が「お姉ちゃんすごーい」と声を上げた。

ちょっと恥ずかしい。

水ヨーヨーはなるべくつり紙を水につけないようにするのがコツなんだ。
そうすればいくつでも釣り上げることができる。

「うまいなぁ。このまま嬢ちゃんに取られ続けられたら、商売上がったりだよ」

「大丈夫です。もう止めますから」

「二個ばっこでいいのかい?」

「はい」

以前水ヨーヨーを取りすぎて店の人に迷惑をかけたことがあるから、一個から五個をとったら、止めようと決めている。

「そいつはありがてぇ。毎度!」

おじさんの言葉を背にして、私たちは『水ヨーヨー釣り』を後にした。
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