Soul Lovers~世界で一番愛する人へ~
-Side Hinako-




歯を食いしばって、病室を飛び出した。



泣いちゃいけない。



泣いたら、また七倉さんに迷惑をかけてしまう。



病院を出て、電車に飛び乗ると、亜理沙の家に向かった。



しかめっ面の私を見た亜理沙が驚く。



「どうしたの?」



「七倉さんに……もう来るなって言われた」



亜理沙の顔を見た途端、ダムが決壊したみたいに涙が溢れた。



涙でくしゃくしゃの私を、亜理沙はぎゅっと抱きしめてくれた。



「中に入って。今日は、もう泊まってきな」






このまま1人で家に帰る気力もない。



兄は、きっと今日もクラブ通いで、家には独りぼっち。



亜理沙の側なら、少しは心が落ち着くかもしれない。



「ごめんね、亜理沙」



私の言葉に、



「バカね。私たち、親友でしょ」



亜理沙は明るくそう言った。



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