Soul Lovers~世界で一番愛する人へ~
半ば強引に、私の手を握って握手をした菅君は、
「真下さんに好きな人がいるのは知ってる。今は友達でいいから、いつか俺を好きになって」
笑顔を引っ込めて、真面目な顔でそう言った。
その日から、菅君は何かと私のクラスにやって来たり、テニス部の午後練が終わるのを待っていて、「一緒に帰ろう」なんて言ってくる。
押しの強い菅君にあたふたしつつも、どうしても七倉さん以外の男の子と2人きりになる気にはなれなかった。
七倉さんの様子は、時々、病室にお見舞いに行く兄から聞いていた。
車椅子から、松葉杖で歩けるようになったとか、
顔の傷が綺麗に消えたとか、
もうすぐギブスが取れそうとか、
順調に回復する七倉さんの話を聞くたびに、心の中の重石が消えて、良かったと安堵する。
その反面、七倉さんについてしまった悪いイメージは消えなくて、事故後、復帰の日が決まらないのは、その噂のせいなんじゃないかって、不安に駆られた。