Soul Lovers~世界で一番愛する人へ~



「ごめんね。こんなとこで」



久しぶりに七倉さんと会ったのは、個室のある高級レストラン。



「素敵なお店ですけど……」



いかにも高そうな雰囲気のお店に、思わず不安になって、七倉さんに耳打ちする。



「私、そんなにお金ありません」



メニューを開くと、一番安い前菜だって、今の財布の中身じゃ注文できない。



すると七倉さんは、なにが可笑しいのか、声を堪えてククッと笑った。



「雛子ちゃんは知らないかもしれないけど、俺、こう見えて、結構お金持ちなんだ」



いたずらっ子みたいに笑う七倉さん。



「高校生の雛子ちゃんに、払わせないよ。ここは俺に出させて」



そう言って、テーブルの向こう側から手を伸ばして、私の頭を撫でた。






コース形式の料理は、どうやって食べたらいいのか分からなくて緊張する。



真剣な顔で、お皿の上の料理と格闘する私を見て、



「選ぶ店、失敗した」



明らかに落ち込む七倉さん。



そんな七倉さんの様子に、料理一つまともに食べられない自分が恥ずかしくなった。



「ごめんなさい」



しゅんとして謝ると、七倉さんは、



「悪いのは俺だよ。窮屈な思いをさせてごめんね」



そう言った。




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