Soul Lovers~世界で一番愛する人へ~
その時、梨央がリハーサル室の壁を叩いた。耳障りな音が室内に響く。
「関係なくないでしょ?これから大事なツアーが始まるの。みんな期待してる。みんな待ってんのよ。私たちの歌とパフォーマンスを!中途半端な気持ちでいないで!!それに……」
俺の耳元に唇を寄せた梨央は、みんなに聞こえないほどの小さな声で囁いた。
「こんなの……私が好きなハルじゃない」
そう言うと、リハーサル室を出る梨央。
俺はふて腐れたみたいに、皆から顔を背けて座り込んだ。
他のメンバーは、戸惑ったように互いの顔を見合わせた。
がむしゃらに求めて辿り着いたこの場所は、どこかちぐはぐで、居心地が悪かった。