Soul Lovers~世界で一番愛する人へ~
声が聞こえた方を見ると、
「雛子ー!やるからには優勝だ!負けんじゃねーぞ!!」
真っ赤なトマトの被り物を頭に被った兄が、両手を振り上げて叫んでた。
「バカ兄貴……」
リコピン星人って書いた名札を胸につけた、兄、雅高。
その場違いの間抜けな姿に、緊張が脱力に変わる。
どこかで七倉さんは来てくれないのかも知れないって、思ってる自分がいる。
来てくれないのは哀しいけど。
それでも私は頑張る。
頑張って、頑張って、小さなボールを追いかけて、この試合に勝つんだ。
これは私の戦い。
ぜったい負けない!
「良い目してんなー」
雅高が、眩しそうに目を細めて呟いた。
そして、そっと、その場を離れた。