兄さん、壊して
意識を失った佐々木さんを抱き上げて、佐々木さんの兄貴は俺を睨んだ。

睨んだ……いや、下等な生物への哀れみのような感情が込められていた。

その後、教室を出る兄貴の後ろ姿をただただ眺めていた。


「お前ってバカだよな」

とあるクラスメートが、俺を嘲笑うかのようにして背中を叩いた。

「佐々木さんに関わらないってのは暗黙のルールだろ」


そうは言われても、な。

美しい薔薇に棘があると知りつつも触りたくなる様に、彼女とも話してみたかった。


ま。これが良い結果と聞かれたら、うんとは答えられないが。


「お前らには分からないんだよ」

「は?」

クラスメートは首を傾げる。


「彼女の美しさが」


美しいのは周知の事実。

だが、誰も近寄らないのはその程度に見ているからだ。

俺は違う。


彼女の攻撃的な一面を見ても尚、引かれたのだ。


今の俺じゃ彼女には見向きされない。

それなら、彼女の弱みでも握ろうか。

……いや、一番の邪魔者。兄貴の方から手をかけていこうう。



さあて。


「覚悟しててね、佐々木さん」


にっこりと笑みを浮かべながら、彼女の撒き散らした体液をすくって舐めた。
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