僕は介護職になりました。

　二日目からは入浴のお手伝いをしました。管理者の中竹さんの方針はしっかりしており、無資格の者には技術が必要な身体介助(歩行や立ち上がり、排泄、着脱等)は絶対にさせてませんでした。

　ですのでドライヤーをかけたり、衣服をまとめて荷物にしまったり、着替えを出しセットしたり、先輩の介助を見学させてもらったり、掃除をしたりしていました。

　ただここでいきなり一つの不安がうまれました。女性高齢者の裸を見ることです。恥ずかしい気持ちや申し訳ない気持ちが芽生えました。身体介助を行うようになれば身体へも触れなくてはいけないと思うと不安は強くなりました。

　やはりここでも『自分には出来るのであろうか？』と思っていました。

　仕事の中でも最初に最も苦労したのは、ご利用者様の名前と顔の一致でした。利用登録されている方は約120名。しかも、ここのディサービスは名札はありません。食事を配膳する時はフルネームでお呼びしなければならないのです。覚えきるまで１ヶ月以上かかりました。

　ご利用者様と会話をしていても咄嗟に名前が出てこない事は多々ありました。

　勤務二週間目になり、徐々に与えられた仕事を覚えてきた頃、僕にとってはとても大きな出来事が起きました。