オフィスにラブは落ちてねぇ!!
愛美は“政弘さん”にギュッと抱きついて、幸せそうに笑う。

「大好きです。」

緒川支部長は嬉しそうに長い腕で愛美を抱きしめて、愛美の耳元に唇を寄せた。

「俺も、愛美が大好きだよ。」

甘くて優しい声に、愛美は全身がゾクゾクと痺れるような感覚に陥る。

緒川支部長の唇が、微かに愛美の耳に触れた。

愛美がビクッと肩を震わせると、緒川支部長はクスッと笑って、愛美の耳にゆっくりと唇を這わせた。

「んっ…。」

(おかしくなりそう…。)

愛美が小さく声をあげ身をよじると、緒川支部長はまた耳元でいたずらっぽく囁く。

「あんまりかわいいから、ちょっと意地悪しちゃった。」

「もう…。」

(私が耳弱いの知ってるくせに…。)

「ごめんね。調子に乗って、また嫌われたくないから、もうやめる。」

緒川支部長は愛美からパッと手を離して、壁時計を見上げた。

「もうこんな時間だ。そろそろ帰ろうかな。」

愛美も壁時計を見た。

時刻は既に12時を回っている。

(やっぱり帰っちゃうんだ…。)

緒川支部長は、寂しそうにうつむいてシャツの裾を握りしめる愛美の頭を撫でた。

「今日も言ってくれないの?」

「え…?」

「言ってくれたら嬉しいんだけどな…。」

(意地悪…私の気持ちわかってるくせに…。)

「帰るよ。」

緒川支部長は愛美の頭をポンポンと優しく叩いた。

「…ないで…。」

消え入りそうな声で愛美が呟く。

「ん…なに?」

「帰らないで…。」

緒川支部長は嬉しそうに笑って、うつむいたまま呟く愛美を抱きしめた。

「じゃあ…愛美が安心して眠れるまで、いようかな。」

「…寝ないで起きてたら、ずっといてくれる?」

愛美が尋ねると、緒川支部長は小さくため息をついた。

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