オフィスにラブは落ちてねぇ!!
「菅谷、座って。」

愛美は頭の中をぐるぐるさせながら、緒川支部長に手を引かれ、もう一度カウンター席に腰かけた。

「政弘、愛美ちゃんと知り合いなのか?」

「うちの職場の…内勤事務員さんなんです。」

「へぇ、そうなんだ。すごい偶然だなぁ。」

(なんなの?!なんのイタズラ?!)

愛美は緒川支部長と目を合わせないようにうつむいて、ぎこちなく水割りのグラスに口をつけた。

(とにかく…早くこれ飲んで帰ろう。)

いつもとは違って不自然な様子の愛美を見て、マスターが笑った。

「紹介する手間、省けちゃったなぁ。」

「なんですか、それ。」

「愛美ちゃんがいい男紹介しろとか言うから政弘呼んだんだけど。」

「え…。」

(ああもう!!余計な事言わないでよマスター!!)

いい男を紹介してと頼んだ事を緒川支部長の前でマスターに暴露され、愛美が気まずい思いをしていると、他の客に呼ばれたマスターはカウンターを出て店の奥のテーブル席の方へ行ってしまった。

気まずい空気のままでマスターに放置され黙り込んでいる愛美をじっと見て、緒川支部長はため息をついた。

「俺に告白されたその日に他の男紹介してもらうくらい…俺の事嫌い…?」

緒川支部長に悲しげな目で見つめられ、愛美はバツの悪そうな顔をした。

(何よその目は…)

「なんでそんなに嫌われるのか、全然わからないんだけど…。俺、菅谷の気に障るような事でもした?」

「今日、思いきり気に障るような事、しましたよね…。」

「あれは…ごめん…。高瀬といる時の菅谷見てたら…なんかもう焦ってどうしようもなくなって…。」

緒川支部長は少し恥ずかしそうに目を伏せた。


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