オフィスにラブは落ちてねぇ!!
「いい大人がなんですかそれ…。」

「そうなんだけど…でもその前から俺の事嫌ってただろ?」

「支部長みたいな上から目線で自信過剰な俺様タイプが嫌いなんです。」

「…俺のどこが?」

「だから…もういいです。自覚ないんですね。」

「いや、俺は全然良くない。嫌われる理由もわからないのに納得いかないから。ちゃんとわかるように説明して。」

どことなく職場にいる時とは別人のような、気弱そうな緒川支部長の様子に気付き、愛美は首をかしげた。

(何これ…?やっぱ別人?なんか調子狂う…。)

「とにかく…私だってなんでそんなに支部長が私にこだわるのか理由がわかりません。好かれるような事した覚えもないですし…。私じゃなくたって、支部長と付き合いたい人なんていっぱいいるでしょう?」

「俺は…菅谷が支社にいた時からずっと好きだったから。いつも笑ってて…それがすごくかわいくて…。あの時、俺も支社にいたけど…声も掛けられなかった。」

「えっ?!」

(何それ?!全然知らない!!)

入社して1年ほど、愛美は支社の人事部で新人研修の雑務を担当していた。

その頃はまだ付き合っていた俺様男も優しくて、仕事も恋愛も充実していた。

彼氏がいたとは言え、違う部署でも同期でなくても、目立つイケメン男性社員は女性社員の間で注目の的になっていたので、顔と名前くらいは知っていたはずだ。

(支部長が支部長になる前…?同時期に支社にいたなんて知らなかった…。なんで?違う部署でも目立つ人なら知ってたのに…。)

愛美は怪訝な顔で水割りを飲んだ。

「私、支社で支部長に会った事ないと思います。」

「なくはない…。廊下ですれ違ったり…人事部に行った時に顔合わせたりとか…。社食で隣になった事もある。」


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