オフィスにラブは落ちてねぇ!!
「やっぱ無理だから!自分から誘っといて何時間も待たせるなんて有り得ない!!オマエみたいな男と付き合うなんて絶対無理だわ!」

「ホントにごめん…。」

どんなに罵倒されても、緒川支部長は言い訳もせず、ただ申し訳なさそうに謝った。

愛美は虚ろな目で涙声を絞り出す。

「嘘つき…。好きだなんて言って…優しいふりなんかして…そのうちどうせ…殴ったり…蹴ったり…浮気したり…金たかったり…ひどい事…するんだろ…?そんで…散々浮気して…私を…捨てるんだろ…?」

「え?」

思いもよらない愛美の言葉に驚いて、緒川支部長はチラリと愛美を見た。

「もう…そんなの…たくさんだ…。」

緒川支部長は苦しそうにそう呟いて涙を流す愛美の頭を優しく撫でた。

「そんな事しないよ…。こんなに好きなのに…。」

「嘘つき…。どうせ…どんなに待っても…戻って来ないくせに…大嫌い…。」

愛美は涙を流しながらゆっくりと目を閉じた。

信号が赤になり、緒川支部長はゆっくりとブレーキを踏んだ。

助手席では頬にいくつもの涙の筋を作った愛美が眠っている。

緒川支部長は愛美の頭を優しく撫でて、額に口づけた。

「待たせてごめん菅谷…。好きだよ…。」





翌朝。

目覚めた愛美はゆっくりと目を開き、見慣れない天井を見上げた。

(ん…ここどこ…?)

頭が重くて起き上がる気にもなれず、ぼんやりとしたまま寝返りを打った。

ぼやけた視界の隅に、ソファーで横になって眠っている緒川支部長の姿が映る。

(……え?)

愛美は慌てて起き上がろうとした。

しかし体に力が入らず、意思に反してグラグラと不安定に揺れる。

「えぇっ…何これ…?」

何もかもが理解できず、そのままベッドにうずくまる。

(ここ…もしかして支部長の家?なんで?)

とりあえず自分が服を着ている事を確認すると、どうしてこういう状況になっているのか、必死で思い出そうとした。

(夕べはマスターの店でずっと水割り飲みながら支部長を待ってて…それで?)


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