オフィスにラブは落ちてねぇ!!
ずいぶん飲みすぎたせいで、ある程度の時間から先の事は何も覚えていない。

(ってか…いつの間に?どうやって?なんも思い出せない…。)

どんなに思い出そうとしても何も思い出せず、愛美は両手で頭を抱えた。

(とりあえず服は着てる…。って事はなんにもなかった…んだよね?)

顔を上げてゆっくりと部屋を見渡すと、昨日着ていたジャケットが壁際のハンガーに掛けられ、バッグと腕時計がダイニングセットのテーブルの上に置かれていた。

男の人なのにずいぶんマメだなと妙なところでは冷静な自分に驚く。

愛美は普段は見る事のない緒川支部長の無防備な寝顔をじっと眺めた。

(寝顔…かわいいかも…。)

不意にそう思ってしまった事に焦って、それを打ち消すように首を横に振った。

(ああっ…しまった…!気持ち悪っ…!!)

どうやら二日酔いの頭には刺激が強すぎたようだ。

また頭の中が不安定にグラグラ揺れる。

(うぅ…最悪…。支部長のせいで二日酔いだよ…!)

愛美が涙目で緒川支部長をにらみつけた時、まるでそれを察知したかのように、その目がゆっくりと開いた。

緒川支部長はソファーの上で大きく伸びをして、ローテーブルの上の眼鏡に手を伸ばした。

眼鏡を掛け、ベッドの上でうずくまっている愛美に気が付くと、少し照れ臭そうに頬をかいた。

「…おはよう、菅谷…。大丈夫?」

「大丈夫じゃないです…。」

緒川支部長は冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して愛美に手渡した。

愛美はそれを黙って受け取り、勢いよく喉に流し込んだ。

「あの…昨日はごめん…。」

「……。」

「ホントにごめん…。」

「…………知りません。」

不機嫌そうに目をそらす愛美の様子に、緒川支部長はオロオロしている。

「ごめん…。カッコ悪いけど…言い訳させて下さい…。」

緒川支部長はベッドのそばに座り、昨日の事を話し始めた。




< 42 / 112 >

この作品をシェア

pagetop