オフィスにラブは落ちてねぇ!!
「……と、いう訳です…。」

ずいぶん長い言い訳を、愛美はベッドの上で膝を抱えて、いつになったら終わるんだろうと、半ば呆れながら聞いていた。

昨日何があって遅くなったのかを、事細かに一生懸命話す緒川支部長を見ていると妙に冷静になって、怒っていた自分が子供みたいだと恥ずかしくもなり、何時間も一人で待たされた事も、仕事だったのだから仕方ないと思えた。

「…もういいです。仕事だったのはわかってますから。」

「ホントごめん…。長い時間一人で待たせて…。」

「でも遅くなるならなるで連絡くらい……。あ…。」

連絡くらいして、と言いかけて、愛美は緒川支部長に連絡先を教えていなかった事を思い出した。

「うん…。菅谷の携帯の番号知らないし…せめて先輩にって思って何度か電話したんだけど、携帯も店も繋がらなくて…。」

「昨日、お店混んでたから…マスター忙しくて気付かなかったのかも…。」

「うん、そうかも…。でもやっぱり、俺から誘ったのに何時間も待たせてごめん、ホントにごめん。」

心底申し訳なさそうに謝る緒川支部長の姿を見ていると、なんだか逆に申し訳ないような気がして、愛美は小さくため息をついた。

「もういいです…。今度からは遅くなるなら早めに連絡して下さい。…番号、教えますから。」

「…うん!」

嬉しそうにうなずいて満面の笑みを浮かべる緒川支部長を見て、愛美は思わず吹き出した。

(今、尻尾が見えたような…。めっちゃ嬉しそうに尻尾振ってる子犬みたい…。この人ホントに支部長?やっぱ別人?)

「バッグ、取ってもらえます?」

緒川支部長は立ち上がってテーブルの上のバッグを持ってきて愛美に手渡した。

そしてローテーブルの上の自分のスマホを手に取る。

愛美はバッグの中からスマホを取り出し、赤外線送信モードにしてプロフィールを画面に映し出した。

「赤外線で送りますよ?」

「あ、うん。」

愛美のプロフィールを受信した緒川支部長は、スマホの画面を見て嬉しそうに笑っている。




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