オフィスにラブは落ちてねぇ!!
緒川支部長の車で家に送り届けられた愛美は、シャワーを浴びながらぼんやりしていた。

（何？このギャップ…。普段の支部長って…あんな激甘な感じ…？）

帰り際に愛美がお礼を言って車を降りようとした時、緒川支部長は愛美をそっと抱き寄せて、唇に軽く触れるだけの短いキスをした。

そしてあの甘い声で、また明日ね、と耳元で囁いた。

ほんの数時間一緒にいただけなのに、緒川支部長の甘さに翻弄され溺れそうになっている自分に気付く。

（なんかもう…おかしくなりそう…。）

さっきまで一緒にいた緒川支部長は、今まで付き合ってきたどの人よりも優しくて、とびきり甘い。

大切そうにそっと抱きしめる腕の温もりや、優しく触れる唇の柔らかい感触に、自分でも驚くほどドキドキした。

仕事中の支部長からは絶対聞く事のない甘くて優しい声で“好きだよ”と何度も耳元で囁かれる度、全身が痺れるようにゾクゾクした。

“めちゃくちゃ大事にする”と言う言葉は、嘘ではないのかもと思ったりする。

（仕事中の支部長は作り物の俺様か…。マスターが言ってた通り、普段の支部長とは正反対…。）

もしもこの先もずっと付き合って行くとして、いつかそのうち仕事中の支部長の事も好きになれたりするのだろうかと考えて、愛美は思わず頭を横に振った。

（いや…普段の支部長だって…まだ好きってわけじゃ…。）

付き合い出したところなのだから優しくて当たり前かもとか、普段の支部長の事はまだよく知らないのだから、安易に流されちゃいけないとか、過去の過ちを２度と繰り返さないようにと自分を戒めた。

（とりあえず…この先どうするのかは、もうちょっとよく見てから考えよう…。）




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