オフィスにラブは落ちてねぇ!!
目が覚めると決まって涙を流していた。

もう眠るのも怖くなって、愛美はぼんやりとした頭で寝返りを打つ。

(なんか疲れちゃったな…。全然休まらない…。)

カーテンをめくってみると、窓の外はいつの間にか真っ暗だった。

暗い部屋の中、蛍光塗料で浮かび上がった壁時計の針は8時15分を指している。

起き上がるのがだるくて、部屋の明かりを灯すのも面倒だ。

食欲はないけれど水分だけでも取っておこうと、愛美は起き上がって水を飲んだ。

水を飲んでペットボトルのキャップをしめた時、チャイムが鳴った。

こんな状態で誰にも会いたくないと、愛美はその訪問者を無視する事にした。

居留守を使って無視しているのに、その人は何度も何度もチャイムを鳴らす。

(しつこいな、一体誰だよ!!私は居ないよ!!)

愛美は何度も鳴るチャイムの煩わしさに耐えかねて、フラフラと立ち上がりドアモニターを見た。

モニター画面には、緒川支部長の姿が映っている。

(…支部長…。)

緒川支部長は、見えもしないのに心配そうな顔をしてドアの向こうの様子を窺っている。

(オマエになんか会いたくない…!!早く帰れ…!!)

愛美は再びベッドに戻り、頭から布団に潜り込んだ。

どんなに無視をしても、チャイムは鳴り続ける。

(うるさい!!もうプラグ抜いちゃえ!!)

愛美はイライラしながら布団から出ると、インターホンのプラグをコンセントから抜いた。

部屋の中に静寂が戻る。

(これであきらめて帰るだろ…。)



< 62 / 112 >

この作品をシェア

pagetop