オフィスにラブは落ちてねぇ!!
緒川支部長は、ただ愛美に会いたい一心でチャイムを鳴らし続けた。

もう何度目かわからない。

(ん…あれ?)

さっきまで部屋の中に響くチャイムの音が漏れ聞こえていたのに、ボタンを押しても聞こえなくなった。

気のせいかと思い、もう一度押してみるが、やはり聞こえない。

急に音がしなくなったという事は、インターホンの電源を元から断ってしまったのだろう。

部屋の中にはいるはずなのに、そんなに俺に会いたくないのかと、緒川支部長は大きなため息をついた。

何もできない自分が不甲斐なくて、思わず拳を握りしめる。

でも、やっぱり会いたい。

緒川支部長は握りしめた拳でドアを叩いた。

一目だけでも会いたい。

せめて声だけでも聞かせてほしい。

大嫌いだと罵られてもいいから。






愛美はドンドンとうるさく鳴り続けるドアの音に、イライラしながらため息をついた。

(ああもううるさい…!!しつこいな、近所迷惑だっつーの!!)

我慢の限界に達した愛美は、ベッドから出てふらつく足取りで玄関に向かった。

鍵を開けて乱暴にドアを開け、緒川支部長をにらみつけて叫ぶ。

「うるさい!!しつこい!!帰れ!!」

緒川支部長は愛美が閉めようとしたドアの隙間に体をねじ込むようにして玄関に入ると、後ろ手にドアを閉め、熱で火照る愛美の体を包み込むようにして抱きしめた。

「愛美…。やっと会えた…。」

「離して!!」

「イヤだ…離さない…。」

愛美は熱のせいか、腕の中で必死でもがく力も弱々しい。


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