オフィスにラブは落ちてねぇ!!
「大嫌い!!離して!!」

「うん…わかってる…。でも、俺は愛美が好きなんだ…。」

「嘘つき!!」

愛美は赤い顔をして息を荒げる。

「ごめん…。」

「そんなの聞きたくない!!」

「ごめん…ホントにごめん…。」

「別れる!!さよなら!!もう帰って!!」

恐れていた言葉を愛美に容赦なくぶつけられ、緒川支部長はつらそうに唇を噛みしめた。

「イヤだ…離したくない…。好きなんだ…。」

緒川支部長が抱きしめる腕に力を込めると、愛美は更に必死になってもがき続けた。

「バカ…大嫌い…離せぇ…。」

愛美の声と力が次第に弱くなる。

「傷付けるくらいなら…最初から、好きなんて言わないで…。優しくしないで…。もう、ほっといて…。」

高熱があるにも関わらず、何度も大声で叫びながら力を振り絞ってもがいた愛美の体が、緒川支部長の腕の中でクタリと脱力した。

「愛美?!」

緒川支部長は慌てて愛美を抱き上げた。

「待つのは…もうやだ…。」

緒川支部長は泣きながら声を絞り出す愛美を部屋の中に運ぶと、ベッドにそっと寝かせた。



しばらく経った頃。

浅い眠りの中で、またつらかった記憶を夢に見ていた愛美が、ゆっくりと目を開いた。

「愛美、気が付いた?良かった…。」

緒川支部長は愛美の顔を覗き込むようにして見つめながら、ホッと胸を撫で下ろす。

(なんでここにいるの…?これもまた夢…?)

< 64 / 112 >

この作品をシェア

pagetop