オフィスにラブは落ちてねぇ!!
「それって彼女の嫌いなタイプだって…。」

「だから嫌いなんだろ?だんだん偉そうになってきて、デート何回もドタキャンされて理由聞いたら殴られたって。女もいたらしいしな。それから愛美ちゃんが口答えしたり、ちょっとでも気に入らない事があったら暴力振るって、オマエは俺がいないとなんにもできないバカな女だろうって言いながら無理やりやるようになったって。」

「なんだそれ…ひどすぎる…。」

大好きな愛美を傷付けた男が許せなくて、緒川支部長はテーブルの上で拳を握りしめる。

「昔の男と少しでも似てるって思うと、自己防衛本能が働くのかもな。だから、仕事中の政弘が大嫌いだって言ってたんだろ。」

「俺は絶対そんな事しませんよ…。」

「そりゃ暴力振るったり犯したりはしないだろうけど…。何時間も待たせたりとかドタキャンとか…。」

「あ…。」

「政弘を待ってるうちに昔の男思い出して、デートドタキャンされてまた思い出して…また傷付けられるかもって、怖くなっちゃったんじゃないか?」

マスターはタバコの火を灰皿の上で揉み消してビールを飲み干した。

「あの子な…私は男運が悪いからってよく言うんだ。男運が悪いから、まともな恋愛できないって。」

「俺は…昔の男とは違う。彼女を大事にしたいって思ってます。」

「政弘は政弘だよ。あの子もそれはわかってるはずだ。でもな…あの子の傷はそれだけ深いんだよ。」

マスターの言葉が緒川支部長の心に重く響いた。

「彼女がね…どうせまた幸せになんてなれない、ほっといてって…。俺と一緒にいても、つらい思いさせちゃうだけなんですかね…。」

「それは政弘次第だけど…仕事柄いろいろ難しい部分はあるだろうな。」

愛美が好きなのに、大事にしたいのに、この先も同じような理由でつらい思いをさせてしまうかも知れない。

「俺は…彼女に笑って欲しいんです…あの時みたいに…。」

緒川支部長は小さく呟いて、グラスの水割りを飲み干した。





< 69 / 112 >

この作品をシェア

pagetop