オフィスにラブは落ちてねぇ!!
「まぁ…いつも一緒にいなくても必要な時はお互いに頼るから。長年一緒にいて培って来た信頼関係ってのもあるんだけどね。」

「信頼関係ですか…。」

「でもあれね。菅谷さんは支部長みたいな人とは一緒になれないわね。いつ帰ってくるかわからないし、休みもろくに休めないし。」

「…そう…ですね…。」

ケラケラと笑っていた金井さんが、愛美の後ろに視線を向けた。

「あら、お帰りなさい支部長。いつの間に帰ってたんですか?」

(え…?)

「さっきからいた。金井さんがおしゃべりに夢中で気付かなかっただけ。」

愛美が振り返ると、すぐ後ろに緒川支部長が立っていた。

「…お帰りなさい、お疲れ様です。」

「……ただいま。」

緒川支部長は無愛想にそう言って、ニコリともせず自販機に小銭を入れた。

(支部長…今の話、聞いてた…?!)

愛美の気も知らず、金井さんは冷やかすように笑って支部長に声を掛ける。

「それにしても残念ね、支部長。菅谷さんは支部長みたいな人とは一緒になれないって。」

「…金井さん、余裕だね。そんなにのんびり飯食ってて午後の訪問に間に合うの?」

「あらもうそんな時間?少し急がないと。」

金井さんはお弁当の残りを慌てて口に入れた。

緒川支部長は缶コーヒーを買うと、愛美とは目も合わせないで支部長席に戻る。

まるで緒川支部長の事を全否定したような“好みのタイプ”を聞いて、どう思っただろう?

“緒川支部長みたいな人とは一緒になれないわね”と金井さんに言われても否定しなかった。

(だってホントの事だし…。もう待たされるのはイヤなんだから…。)



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