オフィスにラブは落ちてねぇ!!
2時半前。

仕事に無駄のない事で有名な支部のトップセールスの森さんが帰社した。

契約後の処理を手際よくこなし、あっという間に帰って行った。

夕方までかかるかと思ったのに、さすが森さん仕事が早いと思いながら、緒川支部長は支社に送るデータを入力する。

これさえ済めば愛美に会いに行けると、緒川支部長は猛スピードでキーボードを叩く。

そんな緒川支部長の様子を見て、高瀬FPと峰岸主管はまた顔を見合わせてニヤニヤした。

「わかりやすいわねぇ…。」

「ホントに。」



3時前。

愛美のスマホがメールの受信を知らせた。


“今から会社を出て、
一度家に戻って着替えてから
愛美の家に行きます。
せっかく早く終わったから、
どこかに出掛けようか?”


思ったよりずっと早く会えるのが嬉しくて、自然と笑顔になる。


“お疲れ様でした。
気を付けて帰って下さいね。
楽しみに待ってます。”


メールを送った後、自分から“楽しみに待ってます”という言葉が出た事に驚いた。

待つのはつらいとずっと思っていたのに、もうすぐ会えると思うと、待っている時間さえ幸せだと感じる。

それはきっと、待つ相手が“政弘さん”だからなのだと愛美は思った。



それから愛美は、丁寧に化粧をして、この間デートの約束をした時に選んだ服を着た。

髪をハーフアップにしてお気に入りの髪飾りをつけた。

もうすぐ会えるとか、どこに行くんだろうとか、浮き足立っている自分が少し照れ臭い。


好きだと言ってくれる人がいて、自分もまた、その人が好きだと思う。

自分の会いたいと思う人が、会いたいと言って会いに来てくれる。

好きな人のためにおしゃれをして、ドキドキしながらその人を待つ。

こんな気持ちになるのは何年ぶりだろう?

いつの間に、こんなに好きになっていたんだろう?





< 92 / 112 >

この作品をシェア

pagetop