オフィスにラブは落ちてねぇ!!
自宅に帰った緒川支部長は、これから愛美とどこに行こうかと考えながら、急いでシャワーを浴びた。

やっと愛美とデートができると思うと、嬉しくて仕方がない。

バスルームから出て急いで体と髪を拭き、クローゼットから洋服を引っ張り出して袖を通す。

愛美はどんな服装が好きだろうとか、一緒に買い物に行って洋服を選んでもらうのもいいなとか、何をしていても、愛美の事で頭がいっぱいだ。

とにかく早く会いたい。

少しでも長く一緒にいたい。

緒川支部長ははやる気持ちを抑えながら愛美にメールを送り、自宅を出て車で愛美の家に向かった。



“出掛ける準備できた?
これから迎えに行くよ。”


緒川支部長からのメールに、愛美も“待ってます”と返信して、スマホをテーブルの上に置いた。

鏡の前で化粧や髪型をチェックしながら、ウキウキと嬉しそうな鏡の中の自分を見て、少し照れ笑いを浮かべる。

しばらくすると、玄関のチャイムが鳴った。

愛美は満面の笑みを浮かべてバッグを肩に掛け、スマホを手に玄関のドアを開けた。

「よぅ愛美、久しぶり。」

そこに立っていたのは“政弘さん”ではなく、ずっと前に別れたはずの、愛美を乱暴に傷付けた、かつての恋人の泰士(ヤスシ)だった。

愛美は目を見開き、蒼白い顔をして体を震わせた。

震える愛美の手からスマホが音をたてて落ちる。



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