sweet♡marriage〜俺様御曹司と偽装婚約〜
「もっとゆっくりしなくて、良かったのか。」
「明日も仕事ですよね。早く帰ってゆっくりしたほうがって私は…」
様子を見るように隣に視線を送るが、一ノ瀬司は前を見つめたままで。
あれ……余計な御世話だったかな。
「あ、あの!翔太が喜んでました。キャッチボールして、ナイター行く約束したって。」
翔太が野球が好きだと知っていたのは
一ノ瀬のネットワークとやらで調べ上げたのだろう。
「昔から、親子や兄弟でキャッチボールをするのが夢だった。」
ポツリと言葉を零す一ノ瀬司。
昔から御曹司として育てられ普通の子供みたいに遊ぶ時間がなかったのかな…
「司さんは一人っ子なんですか?」
「…………ああ。」
間合いがあって彼は答える。
一人っ子じゃ、厳しく育てられるわけだよね。
こんなに冷たい人になっても仕方ないのかも。
ふと、窓の外を眺めていると、明らか帰り道とは逆方向に車は進んでいることに気づいた。
「あの、東京は逆なんじゃ……」
道路標識を見れば、どんどんと東京から離れていくのは一目瞭然だった。
「まだ帰るとは一言も言ってないだろ。」
一ノ瀬司はそう淡々と言うと運転を続けた。