sweet♡marriage〜俺様御曹司と偽装婚約〜
「あの〜全て叩き込むって、絶対…なんですか…?」
キッチンを覗き込むようにして言うと、鋭い視線が私を捉える。
「お前は自分に拒否権があるとでも思っているのか。いいご身分だな。」
なんて、冷たい瞳で言うもんだから私だって黙ってはいられない。
「わ、私にだって一人の人間だし憲法的に拒否権ぐらいありま…っ!」
「言っただろ、お前には借金の一億円分働いてもらうと。まさか、忘れたとは言わないだろうな?」
うっ……やっぱりそこを突かれるとかなり痛い。
私も実家についてきてもらったり散々振り回したもんな……
今度は彼が私を利用する番ってことだもんね。
「………分かりました。頑張ります……」
渋々承諾すると、一ノ瀬司は満更もない感じで。
「フンッ、当たり前だ。俺の前では憲法だか何だか知らんが通用しない。お前は俺に拾われた身分だということを忘れるな。」
淡々と言って泡立ったスポンジを持って食器を洗っていく。
何よ、一々癇に障る言い方しなくたって!
一見、家事を手伝う優しい夫にでも見えようとも中身が鬼畜で冷酷じゃ最悪だよ。
この前実家に帰った時はちょっと優しかったのに……
まさか、幻だったとか!?
表情のない横顔を見つめていると、そんなこともあり得るのかもしれない……なんて思ってしまったのだった。